外国為替及び外国貿易法では、特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければならないとしており、特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出には経済産業大臣への輸出許可申請が必要です。
[1] 特定の種類の貨物
特定の種類の貨物は輸出貿易管理令別表第1に掲げられています。
項番 |
品目 |
品目の例 |
1項 |
武器 |
銃砲、爆発物、戦車、軍艦、戦闘機、軍用ヘルメット 等 |
2項 |
原子力 |
<大量破壊兵器関連資機材>
核燃料物質、核原料物質、原子炉 軍用化学製剤原料、軍用細菌製剤原料 ロケット、無人航空機 等
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3項 |
化学兵器関連 |
3の2項 |
生物兵器関連 |
4項 |
ミサイル |
5項 |
先端材料 |
<通常兵器関連のDual Use品>
ふっ素化合物の製品 軸受、工作機械
集積回路 電子計算機 伝送通信装置、暗号装置 水中探知装置、光検出器、レーザー
加速度計 潜水艇 ガスタービンエンジン、人工衛星 火薬・爆薬の前駆物質 電波の吸収材 等
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6項 |
材料加工 |
7項 |
エレクトロニクス |
8項 |
コンピュータ |
9項 |
通信関連 |
10項 |
センサー・レーザー |
11項 |
航法関連 |
12項 |
海洋関連 |
13項 |
推進装置 |
14項 |
その他 |
15項 |
機微品目 |
16項 |
補完品目 |
食料品、木材等を除く、1項から15項に該当しない品目 |
上記の品目の例は飽くまでも例示であり全てではありません。(輸出貿易管理令別表第1の詳細は経済産業省の安全保障貿易管理のWeb Siteで見ることができます)
輸出しようとする貨物が輸出貿易管理令別表第1に掲げる貨物に該当するか否かを判定することを該非判定といい、経済産業大臣への輸出許可申請の要否を判断する第一歩です。
[2] 特定の地域
特定の地域についても輸出貿易管理令別表第1で規定されており、
輸出貿易管理令別表第1の1項から15項に掲げる貨物にあっては実は全地域、輸出貿易管理令別表第1の16項に掲げる貨物にあっては
輸出貿易管理令別表第3に掲げる地域を除く全地域が規制の対象となる特定の地域です。
貨物 |
特定の地域 |
輸出貿易管理令別表第1の1項から15項に掲げる貨物 |
全地域 |
輸出貿易管理令別表第1の16項に掲げる貨物 |
輸出貿易管理令別表第3に掲げる地域を除く全地域 |
輸出貿易管理令別表第3に掲げる地域:
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、大韓民国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国
→ホワイト国ということがあります。
[3] 輸出許可申請の要否
該非判定の結果、輸出しようとする貨物が輸出貿易管理令別表第1の1項から15項に掲げる貨物に該当する場合は、原則として輸出許可申請が必要です。
輸出貿易管理令別表第1の16項に掲げる貨物の場合は、原則として輸出許可申請は不要です。
貨物 |
仕向地 |
輸出許可申請の要否 |
輸出貿易管理令別表第1の1項から15項に掲げる貨物 |
全地域 |
原則:輸出許可申請必要
輸出貿易管理令第4条の特例により輸出許可申請が不要となる場合を除き、必ず輸出許可申請を要する。
輸出許可申請が不要な場合
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輸出貿易管理令別表第1の16項に掲げる貨物 |
輸出貿易管理令別表第3に掲げる地域を除く全地域 |
原則:輸出許可申請不要
以下の場合を除き、輸出許可申請不要
(1)輸出貿易管理令別表第3に掲げる地域を除く全地域を仕向地として輸出する場合に、その貨物が大量破壊兵器の開発等のために用いられるおそれがある場合として経済産業省令で定めた要件に該当するとき
(平成13年経済産業省令第249号)
おそれ省令又は核兵器等開発等省令という
おそれ省令の詳細 - 新しいWindowが開きます
(2)国連武器禁輸国・地域を仕向地として輸出する場合に、その貨物が通常兵器の開発等のために用いられるおそれがある場合として経済産業省令で定めた要件に該当するとき
(平成20年経済産業省令第57号)
通常兵器開発等省令という
通常兵器開発等省令の詳細 - 新しいWindowが開きます
(3)経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知を受けたとき
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輸出貿易管理令別表第3に掲げる地域 |
輸出許可申請不要 |
国連武器禁輸国・地域:
アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、エリトリア、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、スーダン
[4] 解説
外国為替及び外国貿易法で輸出許可品目とされる貨物は輸出貿易管理令別表第1の1項から16項に掲げられていますが、1項から15項までと16項では上記の表のように規制のされ方が異なります。
1項から15項に該当する貨物は輸出貿易管理令第4条の特例により不要となる場合を除き必ず輸出許可申請が必要です。規制対象となる貨物が輸出貿易管理令別表第1の1項から15項にlistingされていることからリスト規制と呼びます。
対して16項に該当する貨物は貨物の仕様によらず
(1) |
輸出貿易管理令別表第3に掲げる地域を除く全地域を仕向地として輸出する場合に、その貨物が大量破壊兵器の開発等のために用いられるおそれがある場合 |
(2) |
国連武器禁輸国・地域を仕向地として輸出する場合に、その貨物が通常兵器の開発等のために用いられるおそれがある場合 |
(3) |
特別な場合として
経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知を受けたとき |
に輸出許可申請が必要となります。
貨物の仕様にかかわらず規制の対象にすることから16項該当品に対する規制をキャッチオール規制と呼びます。
輸出許可申請の概要
[1] 個別の輸出許可
<申請書類>
(1)
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輸出許可申請書
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(2)
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申請理由書又は輸出許可・役務(プログラム)取引許可申請内容明細書
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(3)
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契約書
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契約書は原則として政府の許可が得られるまで契約が発効しない旨の規定を盛り込んだものであること。
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契約書は原本を提出する場合は当該原本の写しを併せて提出する。(原本は内容確認後返却される)
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原本を提出せずに写しを提出する場合は写しが原本と相違ない旨を誓約した証明書を併せて提出する。(それにもかかわらず原本の提出を求められることはある。当該原本は内容確認後返却される)
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(4)
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その他
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輸出貿易管理令別表第1のどの項番に該当するか、仕向地はどこかに応じて、概ね次の(ア)~(ウ)を添付することが求められます。
(ア)輸出貿易管理令別表第1の記載項目との対比表等、カタログ又は仕様書等の技術資料
(イ)需要者等の事業内容及び存在確認に資する資料(登記簿等の公式文書、会社案内等の企業に関する対外公表資料等)
(ウ)需要者等の誓約書
実際は大変複雑なので、具体的な案件に対処するときは経済産業省の安全保障貿易管理のWeb Siteにある「申請書類・窓口一覧」を参照する必要があります。
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<許可証の有効期限>
6箇月(特に必要があるときは、異なる有効期間となることもあります)
<申請窓口>
・経済産業省安全保障貿易審査課
・経済産業局(東京、横浜、神戸の通商事務所を含む)、沖縄総合事務局
輸出貿易管理令別表第1の該当項番と仕向地の組合せで、経済産業省安全保障貿易審査課が窓口になるか又は経済産業局(東京、横浜、神戸の通商事務所を含む)若しくは沖縄総合事務局が窓口になるかが変ります。
<審査期間>
経済産業省の(お知らせ)では原則として受理から90日以内、90日を超える場合には事前に通知があるとされています。
実態としては窓口が経済産業局等の場合はそれほど時間は掛かりません。
安全保障貿易審査課が窓口になる場合は一般に申請受理後3週間程度を要しているとされているが、貨物、仕向地、需要者等の組合せにより大きく変ります。
経験的には2週間-6週間位のケースが多いと思います。
[2] 包括輸出許可
個別の輸出許可の他一括して許可を受けられる包括輸出許可があります。
(上記情報は2018年9月17日現在のものです)
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