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安全保障輸出管理の基礎

安全保障輸出管理の目的

国際的な平和及び安全

  • COCOM

  • 対共産圏輸出統制委員会、1994年3月解散

  • 核不拡散

  • 広島、長崎

  • Anti-Terrorism

  • 14,779人、6,073件 (2013年)

安全保障輸出管理の目的は「国際的な平和及び安全」です。

歴史的にはCOCOMに遡り、COCOMは東西両陣営の対立を背景として、東側への戦略物資等の輸出規制のためのものであったが、1990年の東西ドイツ統一、1991年のソビエト連邦崩壊を経て意義が薄れたとして1994年に解散した。

COCOMの是非はともかく何をやろうとしていたのかは分かりやすい。対して、COCOM解散後の安全保障輸出管理が何をどのようにしようとしているのかは分かりづらい。

然しながらその分かりづらい中で相対的に分かりやすいのが①核不拡散と②Anti-Terrorismです。

外国為替及び外国貿易法

  • 外国為替及び外国貿易法第48条第1項

  • 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

  • 要約すると
    特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

  • 貨物:貴金属、支払手段及び証券その他債権を化体する証書以外の動産

  • 貴金属:金の地金、金の合金の地金、流通していない金貨その他金を主たる材料とする物

全てはここから始まると言うべき重要な条文です。

輸出をしようとする者

「輸出をしようとする者」とは、およそ貨物の輸出を行おうとする者であり、居住者であるか非居住者であるかを問わない。また、その輸出貨物について所有権を有する者である必要はないが、自己の判断において輸出しようとする者であることを要する。

従いまして、フォワーダー等に輸出を依頼しても輸出者の責任を免れるということはありません。

輸出の時点

輸出の時点は、貨物を本邦から外国へ向けて送付するために船舶又は航空機に積み込んだ時です。

尤も無許可輸出には未遂罪があり、輸出申告に際して無許可輸出が発覚したときは、貨物の積載前であっても、無許可輸出の未遂罪が成立すると考えられます。

その他

当分の間、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島は本邦から除かれます。

特定の種類の貨物とは

  • 輸出貿易管理令(以下輸出令という)別表第1に掲げる貨物

1項 武器 銃砲、爆発物、戦車、軍艦、 戦闘機、軍用ヘルメット等
2項 原子力 <大量破壊兵器関連資機材>
核燃料物質、核原料物質、原子炉、軍用化学製剤原料、軍用細菌製剤原料、ロケット、無人航空機等
Dual Use品を含む
民生用途 懸念用途
チタン合金 腕時計、眼鏡 ガス遠心分離機
TEA(注) シャンプー 化学兵器
凍結乾燥器 インスタントコーヒー 生物兵器
3項
3の2項
化学兵器関連
生物兵器関連
4項 ミサイル
5項 先端材料 <通常兵器関連のDual Use品>
ふっ素化合物の製品、軸受、工作機械、集積回路、電子計算機、伝送通信装置、暗号装置、水中探知装置、光検出器、加速度計、潜水艇、ガスタービンエンジン、人工衛星、無機繊維、電波の吸収材等
6項 材料加工
7項 エレクトロニクス
8項 コンピュータ
9項 通信関連
10項 センサー・レーザー
11項 航法関連
12項 海洋関連
13項 推進装置
14項 その他
15項 機微品目
16項 上記以外の全品目 (但し食料品、木材等は除く)

(注)TEA:トリエタノールアミン

外国為替及び外国貿易法第48条第1項の特定の種類の貨物とは、輸出令別表第1の中欄に掲げる貨物を言います。

16項該当品は1項-15項該当品と規制のされ方が異なり、キャッチオール規制品と呼ばれる。対して、1項-15項該当品はリスト規制品と呼ぶ。

特定の地域とは

  • 輸出令別表第1に掲げる地域

  • 1項-15項に該当するもの(リスト規制品)にあっては全地域

  • 16項に該当するもの(キャッチオール規制品)にあっては輸出令別表第3に掲げる地域を除く地域

  • 輸出令別表第3に掲げる地域
    アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、大韓民国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国

  • 規制の濃淡

  • 規制の強い地域(輸出令別表第4に掲げる地域)
    イラン、イラク、北朝鮮

  • 規制のゆるやかな地域(輸出令別表第3に掲げる地域)
    ホワイト国ということがあります。

  • 国連武器禁輸国地域(輸出令別表第3の2に掲げる地域)
    アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、エリトリア、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、スーダン

外国為替及び外国貿易法第48条第1項の特定の地域とは輸出令別表第1の下欄に掲げる地域を言います。

国際レジームと輸出貿易管理令別表第1

国際レジーム等 輸出貿易管理令別表第1
防衛装備移転三原則 1項 武器
大量破壊兵器
の不拡散
原子力供給国
グループ(NSG)
2項 原子力
オーストラリア
グループ(AG)
3項
3の2項
化学兵器関連
生物兵器関連
ミサイル関連
機材技術
輸出規制 (MTCR)
4項 ミサイル
通常兵器の
過剰蓄積防止
ワッセナー
アレンジメント  (WA)
5項 先端材料
6項 材料加工
7項 エレクトロニクス
8項 コンピュータ
9項 通信関連
10項 センサー・レーザー
11項 航法関連
12項 海洋関連
13項 推進装置
14項 その他
15項 機微品目
欧米諸国等におけるKnow Control 16項 食料品・木材等を除くほとんど全ての品目

輸出令別表第1は国際的な合意に基づいています。

複数の国際的な合意に基づくものなので重複があり得ます。このことは該非判定において重要になります。

例えば工作機械は、2項(12)1と6項(2)で規制されています。工作機械の該非判定に当たり2項(12)1で判定し、非該当であるからといってそこで判定を終了すると6項(2)に該当する場合を見逃すことになります。

手間が掛かりますが該非判定は1項から15項まで全てを見る必要があります。

リスト規制とキャッチオール規制


リスト規制

キャッチオール規制

対象貨物

1項-15項該当品

16項該当品

(食料品・木材等を除くほとんど全ての品目)

規制対象地域

全地域

輸出令別表第3に掲げる地域を除く地域(非ホワイト国)

規制のされ方

原則:輸出許可申請が必要

 

(例外)

輸出令第4条に規定する特例の適用がある場合不要

原則:輸出許可申請不要

 

(例外)

①核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合

②①のおそれがあるものとして経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたとき

③通常兵器の開発、製造又は使用のために用いられるおそれがある場合

④③のおそれがあるものとして経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたとき

輸出許可申請が必要

ただし国連武器禁輸国地域以外を仕向地とする輸出の場合は③を除きます。

備考


①②を大量破壊兵器キャッチオール規制 ③④を通常兵器補完的輸出規制ということがあります。

リスト規制品は輸出禁止ではありません。

リスト規制品(1項-15項該当品)とキャッチオール規制品(16項該当品)は規制のされ方が全く異なります。

大量破壊兵器キャッチオール規制と通常兵器補完的輸出規制


対象地域

規制要件

大量破壊兵器
キャッチオール規制

非ホワイト国

核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合

経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたとき

通常兵器
補完的輸出規制

国連武器禁輸国地域

通常兵器の開発、製造又は使用のために用いられるおそれがある場合

経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたとき

国連武器禁輸国地域以外の非ホワイト国

上記の規制要件なし

経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたとき

通常兵器補完的輸出規制の国連武器禁輸国地域以外の非ホワイト国においては、経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けたときのみ輸出許可申請が必要となります。

核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合とは

輸出貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令(平成13年経済産業省令第249号)

用途要件

①その貨物の輸出に関する契約書若しくは ②輸出者が入手した文書等において 

当該貨物が核兵器等の開発等若しくは別表に掲げる行為のために用いられることとなる旨

記載され、若しくは記録されているとき

又は輸出者が

当該貨物が核兵器等の開発等若しくは別表に掲げる行為のために用いられることとなる旨

③輸入者等から連絡を受けたとき 

需要者要件

①その貨物の輸出に関する契約書若しくは

②輸出者が入手した文書等のうち経済産業大臣が告示で定めるものにおいて

当該貨物の需要者が核兵器等の開発等を行う(行った)旨

記載され、若しくは記録されているとき

又は輸出者が

当該貨物の需要者が核兵器等の開発等を行う(行った)旨

③輸入者等から連絡を受けたとき

(当該貨物の用途並びに取引の条件及び態様から当該貨物が核兵器等の開発等及び別表に掲げる行為以外のために用いられることが明らかなときを除く)

別表に掲げる行為

1.核燃料物質若しくは核原料物質の開発等又は核融合に関する研究

2.原子炉又はその部分品若しくは附属装置の開発等

3.重水の製造

4.核燃料物質の加工

5.使用済燃料の再処理

6.以下の行為であって軍若しくは国防に関する事務をつかさどる行政機関が行うもの又はこれらの者から委託を受けて行うことが明らかにされているもの a.化学物質の開発又は製造 b.微生物又は毒素の開発等 c.ロケット又は無人航空機の開発等 d.宇宙に関する研究 (a及びdについては告示で定めるものを除く)

核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合というのは省令で定められているということを認識する必要があります。

別表行為には特に注意が必要です。別表行為とは核兵器等の開発等そのものではないが、それと密接に関連する行為です。

a.化学物質の開発又は製造

経済産業大臣が告示で定める化学物質の開発又は製造とは、化学物質の開発又は製造であって、次のいずれにも該当しないことが明らかなものをいう。

  1. 輸出貿易管理令別表第1の3の項(1)の中欄に掲げる貨物又は化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律施行令別表に掲げる物質の開発又は製造
  2. 農薬(殺菌剤を含む)、肥料又は殺虫剤の開発又は製造

d.宇宙に関する研究

経済産業大臣が告示で定める宇宙に関する研究とは、宇宙に関する研究であって、専ら天文学に関するものであることが明らかなものをいう。

輸出者が入手した文書等、経済産業大臣が告示で定めるものとは

  • 輸出者が入手した文書等

  • 輸出者がその貨物を輸出するにあたっての、個々の契約に限定されず、当該輸出者が輸出の前に入手した全ての文書等をいう。 ただし、これは輸出者に対して特定の文書等の入手を義務づけるというものではなく、通常の商慣習の範囲内で入手した文書等との趣旨である。

  • 輸出者が入手した文書等のうち経済産業大臣が告示で定めるもの
    ①その貨物の輸出に関し、輸入者等から入手したパンフレット又は最終製品のカタログ及びその他の輸出者が入手した文書等
    ②核兵器等の開発等の動向に関し、経済産業省が作成した文書等(外国ユーザーリスト)
    ③①、②のほか、その貨物の輸出に際して、輸出者がその内容を確認した文書等

  • ③は「その貨物の輸出に際して、輸出者がその内容を確認した文書等」に関する規定である。例えば、過去の取引において入手し、倉庫等に保管されていた文書等で、その貨物の輸出に際して内容確認を行った文書等はここでいう「輸出者が入手した文書等」に該当することとなる。なお、およそ当該輸出者の取引実態から考えて、当該輸出者が確認すると考えられないもの、例えば、当該輸出者にとって特異な言語で書かれた文書や極めて大部な文書は、ここでいう「輸出者が入手した文書等」には該当しない。 (ただし、その内容を確認した場合にはこの限りでない)

輸出貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがあるか否かの見極めは、その貨物の輸出に関する契約書又は輸出者が入手した文書等によります。
どこまで調べるかが問題ですが、輸出者が入手した文書等とは、輸出者が輸出の前に入手した全ての文書等をいうが、輸出者に対して特定の文書等の入手を義務づけるというものではなく、通常の商慣習の範囲内で入手した文書等との趣旨であるとされています。

Q&A

Q

たまたまテレビを見ていて、懸念情報を知った場合は客観要件に当たりますか。

A

該当しません。但し、そのような客観要件にあたらない場合であっても、懸念を知った場合は、是非当省にご相談下さい。

(用途要件と需要者要件を併せて客観要件といいますが、客観要件に該当しない場合でも核兵器等の開発等又は別表に 掲げる行為のために用いられることとなることを知った場合には、経済産業省に報告する)



Q

輸出後の輸出管理部門の調査において、営業部門において輸出前に客観要件に該当していたことが判明しました。この場合、違法輸出に当たりますか。

A

違法輸出に当たります。社内での輸出管理は確実に行う必要があります。 



Q

輸出の時点では客観要件に該当していませんでしたが、輸出後に、輸出した貨物、需要者に関する懸念情報を新たに入手しました。この場合は違法輸出に当たりますか。

A

違法輸出に当たりません。



Q

入手した文書等には、「入手することが可能な文書等」も含まれるのですか。 

A

含まれません。輸出の時点までに実際に入手している文書等について客観要件のチェックを行って下さい。

  (出典:経済産業省安全保障貿易管理政策課のWebSite)

外国ユーザーリスト

外国ユーザーリストとは、経済産業省が大量破壊兵器の開発等への関与が懸念される企業・組織を掲載し、公表しているリストです。

このリストに掲載されている企業等に輸出等を行う場合にはそれが大量破壊兵器の開発等に用いられないことが明らかな場合を除き、経済産業大臣の許可が必要となります。

大量破壊兵器等の開発等に用いられるおそれの強い貨物例

品目

懸念される用途

1. リン酸トリブチル(TBP)

核兵器

2. 炭素繊維・ガラス繊維・アラミド繊維

核兵器、ミサイル

3. チタン合金

核兵器、ミサイル

4. マルエージング鋼

核兵器、ミサイル

5. 口径75ミリメートル以上のアルミニウム管

核兵器

6. しごきスピニング加工機

核兵器、ミサイル

7. 数値制御工作機械

核兵器、ミサイル

8. アイソスタチックプレス

核兵器、ミサイル

9. フィラメントワインディング装置

核兵器、ミサイル

10. 周波数変換器

核兵器

11. 質量分析計又はイオン源

核兵器

12. 振動試験装置

核兵器、ミサイル

13. 遠心力釣り合い試験器

核兵器、ミサイル

14. 耐食性の圧力計・圧力センサー

核兵器、ミサイル

15. 大型の非破壊検査装置

核兵器、ミサイル

16. 高周波用のオシロスコープ及び波形記憶装置

核兵器

17. 電圧又は電流の変動が少ない直流の電源装置

核兵器

18. 大型発電機

核兵器

19. 大型の真空ポンプ

核兵器

20. 耐放射線ロボット

核兵器

21. TIG溶接機、電子ビーム溶接機

核兵器、ミサイル

22. 放射線測定器

核兵器

23. 微粉末を製造できる粉砕器

ミサイル

24. カールフィッシャー方式の水分測定装置

ミサイル

25. プリプレグ製造装置

ミサイル

26. 人造黒鉛

核兵器、ミサイル

27. ジャイロスコープ

ミサイル

28. ロータリーエンコーダ

ミサイル

29. 大型トラック(トラクタ、トレーラー、ダンプを含む)

ミサイル

30. クレーン車

ミサイル

31. 密閉式の発酵槽

生物兵器

32. 遠心分離器

生物兵器

33. 凍結乾燥機

生物兵器

34. 耐食性の反応器

ミサイル、化学兵器

35. 耐食性のかくはん機

ミサイル、化学兵器

36. 耐食性の熱交換器又は凝縮器

ミサイル、化学兵器

37. 耐食性の蒸留塔又は吸収塔

ミサイル、化学兵器

38. 耐食性の充てん用の機械

ミサイル、化学兵器

39. 噴霧器を搭載するよう設計された無人航空機(UAV)(娯楽若しくはスポーツの用に供する模型航空機を除く)

ミサイル、生物・化学兵器

40. UAVに搭載するよう設計された噴霧器

ミサイル、生物・化学兵器

大量破壊兵器キャッチオール規制のまとめ

  • 対象地域

  • 輸出管理を厳格に実施している輸出令別表第3に掲げる地域を除く地域

  • 対象となるもの

  • リスト規制に該当しない全品目(但し、食料品、木材等は除く)

→ 特に注意 おそれの強い貨物例

  • 許可が必要となる要件

  • (1)輸出者による判断(→ 客観要件)

  • ①用途要件

    ・輸出先等において、大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれがあるどうか

    ②需要者要件

    ・輸入者・需要者が大量破壊兵器の開発等を行う(行っていた)かどうか

    ・ 外国ユーザーリスト掲載の企業・組織かどうか

  • (2)経済産業省による判断(→ インフォーム要件)

  • ・経済産業大臣から許可を取るよう通知を受けた場合

役務取引の輸出管理

  • 外国為替及び外国貿易法第25条第1項

  • 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造若しくは使用に係る技術(以下「特定技術」という。)を特定の外国(以下「特定国」という。)において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者又は特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者は、政令で定めるところにより、当該取引について、経済産業大臣の許可を受けなければならない。


何を 何処で 誰に 誰が
特定技術を 特定国において 限定なし 居住者若しくは非居住者
限定なし 特定国の非居住者に 居住者
  • 輸出管理における役務取引≒技術を提供することを目的とする取引(有償無償を問わない)

  • ②が固有の意味を持つのは技術の提供が本邦内で行われる場合である。

  • 「特定国において」の特定国と「特定国の非居住者に」の特定国は一致する場合も異なる場合もある。

外国為替及び外国貿易法第25条第1項は役務取引の輸出管理における最重要条文です。

ここでは①特定技術を特定国において提供することを目的とする取引を行おうとする者又は②特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者は当該取引について、経済産業大臣の許可を受けなければならないとされています。

特定技術、特定国

  • 特定技術

  • → 外国為替令別表に掲げる技術

  • 1項-15項リスト規制技術

  • 16項キャッチオール規制技術

  • 特定国

  • → 外国為替令別表に掲げる外国

  • 輸出令別表第1に掲げる地域と同じ。
    即ち

  • 1項-15項に該当するもの(リスト規制技術)にあっては全地域

  • 16項に該当するもの(キャッチオール規制技術)にあっては輸出令別表第3に掲げる地域を除く地域

技術とは

  • 技術とは貨物の設計、製造又は使用に必要な特定の情報をいう。この情報は、技術データ又は技術支援の形態により提供される。

  • 技術の提供の形態・方法に特段の限定はない。

  • 有形 → 文書、図画、記録媒体、装置に記録されたもの

  • 無形 → 口頭での技術指導、電気通信による情報の送信

  • データベースにアクセスさせる。

  • 技術はプログラムを含む。

  • 居住者から非居住者への技術提供は本邦内で行われても規制の対象。

電話による技術提供に注意
平成21年の省令改正により、許可を要しない16項該当無形技術の範囲が変わりました。

改正前:

当該技術に係る情報を記録したものの提供を伴わないもの

改正後: 当該技術を内容とする情報が記載され、若しくは記録された文書、図画若しくは記録媒体の提供若しくは電気通信による当該技術を内容とする情報の送信を伴わないもの

電話による16項該当無形技術の提供はキャッチオール規制の対象です。

居住者、非居住者とは

  • 居住者とは本邦内に住所又は居所を有する自然人及び本邦内に主たる事務所を有する法人等をいう。

  • 日本人は居住者、外国人は非居住者と推定する。


個人 法人、団体、機関他
日本人 外国人
居住者 (本邦に居なくても居住者)
①本邦の在外公館に勤務する目的で出国し外国に滞在する者
(外国人が居住者になる場合)
①本邦内にある事務所に勤務する者
②本邦に入国後6月以上経過するに至った者
①本邦内に主たる事務所を有する法人等
②外国の法人等の本邦にある支店、出張所その他の事務所
③本邦の在外公館
非居住者 (日本人が非居住者になる場合)
①外国にある事務所に勤務する目的で出国し外国に滞在する者
②2年以上外国に滞在する目的で出国し外国に滞在する者
③本邦出国後外国に2年以上滞在するに至った者
④前記①~③で一時帰国しその滞在期間が6月未満の者
(本邦に居ても非居住者)
①外国政府又は国際機関の公務を帯びる者
②外交官又は領事官及びこれらの随員又は使用人
(外国において任命又は雇用された者に限る)
①本邦内に主たる事務所を有しない法人等
②本邦の法人等の外国にある支店、出張所その他の事務所
③本邦にある外国政府の公館(使節団を含む)及び本邦にある国際機関
④合衆国軍隊等及び国際連合の軍隊等


公知の技術等

  • 以下の役務取引は許可を要しない。

  • 公知の技術を提供する取引又は技術を公知とするために当該技術を提供する取引であって、以下のいずれかに該当するもの

新聞、書籍、雑誌、カタログ、電気通信ネットワーク上のファイル等により、既に不特定多数の者に対して公開されている技術を提供する取引
学会誌、公開特許情報、公開シンポジウムの議事録等不特定多数の者が入手可能な技術を提供する取引
工場の見学コース、講演会、展示会等において不特定多数の者が入手又は聴講可能な技術を提供する取引
ソースコードが公開されているプログラムを提供する取引
学会発表用の原稿又は展示会等での配布資料の送付、雑誌への投稿等、当該技術を不特定多数の者が入手又は閲覧可能とすることを目的とする取引
  • 基礎科学分野の研究活動において技術を提供する取引

  • 工業所有権の出願又は登録を行うために、当該出願又は登録に必要な最小限の技術を提供する取引


リスト規制貨物・技術の輸出管理

リスト規制貨物・技術の輸出管理


キャッチオール規制貨物・技術の輸出管理

キャッチオール規制貨物・技術の輸出管理


注意すべき事

(1) 初歩的な誤り → 持って帰って来るからいいだろう。
(2) 役務取引 → 取引などしていません。

取引は通常は対価を伴うが、輸出管理上は無償であっても規制される。
輸出管理における役務取引≒技術の提供(有償無償を問わない)海外出張時は特に注意。
(3) 民生用途 → 民生用途だから輸出許可不要のはず

軍事用途の場合許可を要するということはある。しかし民生用途であってもリスト規制品の輸出にあっては特例の適用がない限り輸出許可を要する。
(4) 国内で行う技術指導 → 日本国内で行う研修であれば、外国との取引に当たらないはず

日本国内で行われても居住者から非居住者への技術提供は規制の対象。
(5) 自社の海外子会社との取引

自社の海外子会社との取引なら、輸出許可は不要なのでは。

輸出先が自社の海外子会社であってもリスト規制品の場合は特例の適用がない限り輸出許可が必要。
(6) 迂回輸出の禁止、輸出関連取り引き

外為法等により規制されている地域以外の地域への輸出若しくは提供又は輸出を前提とする国内販売であっても、最終的に規制対象地域への輸出又は提供がなされることが明らかな場合には、規制対象地域への輸出又は提供となる。(6貿第604号大臣通達による要請)


罰則規定

  • 外国為替及び外国貿易法第69条の6から第73条

  • 最大で10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金 若しくは違反行為の目的物の価格の5倍以下の罰金(違反行為の目的物の価格の5倍が1000万円を超えるとき)又は併科


  • 外国為替及び外国貿易法第25条の2、第53条 (行政制裁)

  • 3年以内の貨物輸出、技術提供の禁止


両罰規定

  • 会社の業務に関して違反行為があったときは外国為替及び外国貿易法第72条第1項の両罰規定により行為者が罰せられるほか、会社に対して罰金刑が科せられる。

  • 外国為替及び外国貿易法第72条第1項(括弧書き省略) 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第69条の6から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

・「行為者を罰するほか」という文言により違反行為をした者の範囲が行為者を含むものに拡張される。


  • 両罰規定の始まりは、外為法の前身に当たる昭和7年の資本逃避防止法とされている。


分かりづらいところは以下の「専門家に聞く」専用メールフォームを利用して聞いて下さい。 「専門家に聞く」専用メールフォーム
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(上記情報は2018年7月1日現在のものです)

その他の役に立つ情報

輸出許可申請とは 輸出許可申請が不要な場合 包括輸出許可とは
一般包括許可取得のメリット 該非判定のやり方 輸出者等遵守基準とは
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よくある質問

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